マシュピ農園物語:カカオと生命を育む森

最終更新: 2019年5月21日

文:和田彩

   ***  *     * * 森のはなし *  *     *    ***



エクアドル・チョコ生命地域が育む多様性


まずマシュピはなんと言っても、その森です。マシュピはエクアドルの首都キトがあるピチンチャ県の北西部にあります。この地域は、チョコ生命地域(※チョコレートのチョコではなく、地域の名前で、発音はチョコの「コ」にアクセントをおきます)と呼ばれる、パナマの南東部からエクアドルの北部までを含む、18万7,400平方Kmに及ぶ緑の回廊の中に位置します。


この地域はその降水量の多さと海抜ゼロメートルの海岸地方、河口、谷、アンデスの麓から4,000m級の山々が生むその複雑な エコシステムから「ネオ・トロピカル」と呼ばれ、この地域固有の動植物を育んできました。


マシュピは、山岳部、雲霧林、亜熱帯、熱帯が混在する標高500〜1400mの湿度温度ともに高い気候で、アンデスメガネグマ、ピューマなどの哺乳類、鳥類、両生類(2015年に新種のカエルが発見されました。学名:Hyloscirtus mashpi)など多種多様な動植物の貴重な住処なのです。 ちなみに昨年、ユネスコは、マシュピを含む、ピチンチャ県北西部を生物圏保護区として宣言しました。面積で言うと、286,000ヘクタールありますが、その中に、12種類もの森林、4つの気候(エクアドルの小気候は本当に多様!!)もあるんです!



急速に失われる原生林とアレホさんたちの再生活動


しかしこの数十年の間に、土地を持たない地域住民たちが材木との交換条件で土地の所有権を得るために大規模な森林伐採を行ったため、森林破壊が急激に進みました。その後、酪農とバナナ、パームオイル用のやし、パルミート(※ハート・オブ・パーム(サラダに使われるパームの芯の柔らかい部分))とカカオの単一栽培がさかんになったことが森林伐採にさらに拍車をかけ、かつてあった原生林の90%が失われてしまっているのです。

そこでマシュピを運営しているアレハンドロ・ソラーノ(通称アレホ)さんとアグスティーナ・アルコスさんは、購入時、ほとんど牧草地だった土地56ヘクタール(ha)のうち46haを森として、再生する活動を開始しました。意識していたのは、「自然遷移」。



自然遷移とは、「『植物群落を構成する種や個体数が時間に伴い変化すること』、端的にいえば、『裸地から森林が形成される過程のこと』」(森林・林業学習館HPより)です。つまり森が人間の手を加えずに形成される様を模倣しながら、森作りをしていくことそして植林というのは、単に木を植えることではなく、全体的で有機的な森を形成するお手伝いをするということ。そしてこの地域の森のパイオニアプランツ(※森が再生される際、最初に生える先駆的な植物) は、ヘリコニア類でした。


そこで森からヘリコニア仲間を数種類移植することから始め、 森から様々な種や苗を採取し、高低差を最低4段階あるように植えていき、森の再生に努めました。最初は18種類ほどの木々しか生えていませんでしたが、5年後、分かる範囲で50種類、増えた木々からまた風や虫、鳥たちが種を運び、草類は12種類から23種類、鳥類は54種類から156種類まで増えたのです。


マシュピの森の写真はこちら↓ https://photos.app.goo.gl/7QBPZe53RpiTN2c66


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