マシュピ農園の森づくり~畑づくりが森をよみがえらせる!



「赤道(Equator)」に由来する名を持つエクアドル。首都キトのあるピチンチャ県に、マシュピ農園とカカオ工房があります。エクアドル在住の和田彩子さんが、マシュピ農園の魅力を、今回は畑の話にフォーカスして送ってくれました!



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地域にまだ残っている貴重な森を模倣して、森を作っているマシュピの人々。森の再生がある程度軌道に乗った頃、アレホさんたちは、56ヘクタール(ha)のうち、10haを生産活動に当てることにし、森が再生していく様を模倣しながらの森林農法に則ったカカオ栽培を始めました。




この地域の森のパイオニアプランツは、ヘリコニア。つまりバナナの仲間です。バナナとともに、ここエクアドルでは「ユカ(キャッサバ)のねずみ」、あるいはアレホさんの母国で あるコスタリカでは「カカオの母」、呼ばれる豆科の植物を植えました。


この「カカオの母」は、枝を切り取り、そのまま土に挿すだけでまた根を伸ばします。この木は葉っぱを育てる窒素、花や実を育てるリン酸、根を育てるカリウムを土に与えてくれます。また葉や枝を定期的に落とすことで、土の表面をおおうマルチの役割してくれるので、土壌流出も防ぐことができると同時に、土にとっての栄養素となるバイオマスとなるのです。

さらにホウ素、銅、鉄、亜鉛、マグネシウム、マンガンなどのミクロ要素、有機物、微生物、ミネラルなどを 与えられるように、森の微生物たっぷりの手作り液肥などを与えています。それを数回繰り返した後、炭素を与え、土を柔らかくしてくれる自然の耕運機のようなユカと、土の表面をカバーするためのカナバリアという豆科のピーナッツの仲間を植えました。人工的に植える植物も自然発生的に生える植物も含め、様々な作物・植物が土と相互的に有機的に作用しあい、土壌を豊かにしてくれるのです。その次の段階では、カカオ、様々なフルーツ、パルミートなどを間隔を開けながら等高線上(同じ標高のところに列を作って植える。パーマカルチャーの技術の一つ)に植えていきました。



現在、カカオの他、農園に植わっているフルーツは、パパイヤ、ボロホと呼ばれるビタミン・ミネラル豊富なスーパーフルーツ、マンゴスチン、ドリアン、パンの実、ジャックフルーツ、こちらでいうところの山ぶどうなど、世界中のトロピカルフルーツが20種類以上植えてあります。外来種の木々が在来種の木々を駆逐しないよう、World Agroforestry Networkに記載されているそれぞれの木の特徴を把握し、攻撃的でない種類を厳選して 植えています。こうして様々な木々と調和を保ちながらカカオを森林栽培していくによって、経済的な生産をしている畑も森とつながっていくことができるのです。

 ここでは数種類のカカオを植えることで、交配したり、あるいはしなかったりして、様々な種類のカカオができ、仮に何かの病気が出たとしても全滅ということにはなりません。 また成長速度もそれぞれなので、収穫期もずれ、年に二回の収穫ピークを迎えることができます。


 このカカオ畑には、カカオポッド(カカオの身が詰まった、木に実っている状態)の外殻がたくさん落ちています。収穫した後は、その場で実を取り、その殻は一定の距離をあけて畑に残されます。

カカオの外殻に残る果肉・溜まった水につられてハエの一種が孵化し、カカオの花の受粉を促す役割を果たしてくれるのです。大量生産をするカカオ農園では、多くの場合、殺虫剤を使うのでハエが駆逐されてしまうし 、あるいはそうでなくても、カカオポットごと収獲し、別の場所に持って行ってから実を分けるので、外殻の水たまりができず、ハエが孵化できません。このハエは孵化した場所から30m以上遠くへは飛べないので、このハエがいないカカオ農園は受粉率を上げることができないのです。

 カカオにかかりやすい病気は、「黒いカカオ豆」、もう一つは「魔女の箒」という菌による病気です。週に二度、農園を周り、これらの病気が付いているカカオの豆を取り、病気が付いている側を下にして枯葉などが落ちてたくさん菌が付いている白っぽいところに触れるようにしておくことで、この自然にある菌が、病気の元になる菌を食べてくれるので、これらの病気の蔓延を未然に防ぐことができます。

 こうしてマシュピ農園のカカオは、木々だけでなく、そのすべての虫や菌などの助けも借りて、育っていくのです。


和田彩子: 1975年生まれ。1999年のエコツアーにて、初めて訪れたエクアドルの自然、そしてそこで出会った人々にあまりに感動し、再び来ることを決意。2002年に再びエクアドルに向かい、1年の滞在のつもりだったのが、いろいろなご縁に恵まれ、根無し草が根をおろすことに。現在、ウィンドファームとナマケモノ倶楽部のスタッフとして、インタグ地方の鉱山開発反対運動と森林農法コーヒー生産者に関わりながら、アンデス山脈の麓のコタカチ郡の村に小さな有機農園を夫と三人の子どもたちとともに営む。

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